2025-10-09

空き家を相続したものの、どのような手続きや管理を行えばよいのか分からず、不安を感じていませんか。実は、相続した空き家には、法的な対応や適切な管理が求められます。これらを怠ると、思わぬ税負担や近隣トラブルにつながる場合があるため注意が必要です。この記事では、空き家相続後にまず行うべき手続きや押さえておくべき管理のポイント、放置によるリスクまで、分かりやすく解説します。迷いや不安を解消し、安心して空き家対応を進められるよう、ぜひご参考ください。
空き家を相続したら、まず最初に行うべき手続きは「相続登記」です。相続登記は、被相続人から不動産を相続した時に、登記手続きを行って名義を変更するものですが、2024年4月1日からは義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記しなければ、最大10万円の過料(罰金)が科される可能性があります。これは、所有者不明の土地や空き家が社会問題となっている現状への対策として定められたものです。また、2026年には住所変更の登記義務化も予定されています。
| 手続き内容 | 概要 | 期限など |
|---|---|---|
| 相続登記 | 不動産を相続した際の名義変更 | 3年以内。未済で過料最大10万円 |
| 住所変更登記 | 所有者の住所・氏名変更 | 2026年施行予定。2年以内 |
| 相続放棄 | 相続財産すべてを放棄する手続き | 相続開始を知った日から3カ月以内 |
次に、「名義変更を速やかに行うこと」は特に重要です。相続登記をせず名義を放置しておくと、所有関係が不透明になり、将来的な遺産分割協議が複雑化します。登記によって法律上の所有者が明確になれば、権利関係の整理が円滑になり、第三者に売却や処分する際にもスムーズに進めやすくなります。
さらに、「相続放棄」の可否についても簡単に確認しておきましょう。相続放棄とは、被相続人の財産や負債を一切引き継がず、最初から相続人でなかったとみなされる手続きですが、この手続きは「相続開始を知った日から3カ月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります。また、一度相続放棄をすると取り消しできませんので、慎重な判断が求められます。
相続した空き家をそのままにしておくと、さまざまなリスクが生じます。まず、所有しているだけで固定資産税や都市計画税が課せられ続けます。特に「住宅用地特例」による税の軽減(固定資産税が住宅用地なら1/6に軽減されるなど)が受けられる場合でも、適切な管理がされておらず「特定空き家」に指定されると、この特例が適用外になり、税額が最大で6倍に跳ね上がる可能性があります。さらに、建物の老朽化やカビ・害虫の発生などによって近隣に損害を及ぼした場合、所有者には賠償責任が生じることもあります。また、不法侵入や景観悪化などの近隣トラブルの温床にもなりかねず、行政からの命令や強制解体の対象になる場合もあります。
以下に主なリスクを表形式で整理しました。
| リスク項目 | 具体的内容 | 影響・対応 |
|---|---|---|
| 税負担の増加 | 特定空き家指定により固定資産税・都市計画税が最大6倍 | 特例の解除を防ぐために、定期的な管理と改善対応が必要 |
| 建物劣化・衛生問題 | 老朽化・カビ・害虫・雑草などの発生 | 点検・清掃・換気などの基本対策を継続する必要あり |
| 近隣トラブル・行政処分 | 不法侵入・景観悪化・行政代執行による強制解体 | 苦情回避や改善指導に応じる体制づくりが求められる |
実際、相続した空き家を放置すると、固定資産税は住宅用地の特例が解除されて最大6倍となる事例があります。この税制度の仕組みは「空き家等対策の推進に関する特別措置法」に基づくもので、自治体による調査・助言・勧告・命令・行政代執行という段階を経て進められます。対応を怠ると、税負担の急増や罰金、解体費用など重い負担となります。
加えて、建物が老朽化し手入れがされずに放置されると、カビや害虫が発生しやすくなり、衛生上の問題となるだけでなく、倒壊や火災のリスクも高まります。これにより、近隣住民との間でトラブルになるほか、損害賠償責任を負う可能性もあります。さらに、不法侵入などの犯罪の温床にもなりやすいため、空き家管理を怠ることは多面的なリスクを抱えることを意味します。
相続放棄をおこなっても、空き家などの相続財産に関する管理義務(法律上は「保存義務」)が残る場合がありますので、ご注意ください。
まず、改正された民法(令和5年4月1日施行)では、「相続放棄した者が、その放棄の時に相続財産を現に占有している場合に限り、相続人または相続財産清算人へ引き渡すまでの間、自己の財産と同じ注意をもって保存しなければならない」と明文化されました。そのため、たとえば被相続人と同居していた方が相続放棄をしても、その家屋を「現に占有」している限り、倒壊防止や雑草の除去、雨漏り対策などの最低限の維持管理義務が残ります。
次に、保存義務を怠ると、近隣住民への迷惑や建物倒壊による事故などから、損害賠償責任を問われるリスクがあります。また、空き家が犯罪や放火の対象になるなど、事件への巻き込まれや共犯の疑いが生じる可能性も否定できません。
最後に、完全に管理責任から解放されるには、以下の二つの方法があります。
| 方法 | 概要 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 他の相続人へ引き渡す | 相続放棄していない相続人などに空き家の管理権を移す | 該当者が引き継げば保存義務も移転 |
| ② 相続財産清算人を選任 | 家庭裁判所へ申し立てて、専門家を管理者に指定してもらう | 清算後に残った財産は国庫に帰属 |
| ③ 競売代金の供託 | 競売に付して得た代金を裁判所へ供託 | 供託によって保存義務を免除される |
特に②の相続財産清算人(かつての相続財産管理人)は、債務処理や処分を代行してくれるため、自身で管理することなく責任を免れたい場合に有効です。
空き家の管理は、相続したばかりの方にとって負担になりがちですが、初期対応をしっかりと行うことでリスクを抑えることができます。まずは、定期的な点検や見回りを実施することが基本です。通気・換気、通水、簡易清掃を行い、雨漏りやカビ、害虫の発生を確認しましょう。これらの対応は建物の劣化や衛生問題を未然に防ぐうえで非常に重要です。そのうえで、ご自身での管理が難しい場合は、地域の空き家管理代行業者や支援体制を活用することを検討してください。こうした代行サービスは、遠方からの管理や高齢での対応が困難な方にとって有効な手段となります。また、空き家の今後の用途が未定でも、いずれ「売却」「賃貸」「維持」の選択肢を検討するタイミングを逃さないよう、早い段階で判断の準備をしておくことも大切です。
以下の表は、空き家管理における初期対応の基本と、その方法を整理したものです。
| 対応項目 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 定期点検(通気・換気・通水・清掃) | 月に1回以上、窓を開け空気を入れ替え、水回りを流して排水トラップを維持 | カビ・害虫・悪臭の予防、排水詰まりや設備劣化の発見 |
| 代行サービスの活用 | 専門の業者による巡回点検、報告、簡易清掃など | 遠方からの管理、高齢の方など自身で対応が難しい場合の安心確保 |
| 将来の用途検討 | 売却や賃貸、維持などの選択肢の方向性を早めに整理 | 相続後の資産価値維持や負担軽減の検討準備を行う |
具体的には、月1回の換気や通水は、専門業者が「空き家管理サービス」として提供するのが一般的で、費用は大きく変わりますが、1万円以内で利用できるケースも多くあります。費用だけではなく、実施内容や報告の方法を重視して選ぶことが重要です。また、定期的な点検を行っていると、建物の劣化や近隣への影響を早期に発見できるため、将来的なトラブル回避にもつながります。将来の活用方法がまだ固まっていない段階でも、早めに対応を始めることで、選択肢の幅を広げつつ管理負担を抑えることができます。
空き家を相続した際には、相続登記や名義変更といった重要な手続きを速やかに行うことが欠かせません。管理を怠ると固定資産税や都市計画税の負担が増すほか、「特定空き家」に指定されることで景観や安全面でも不利益が生じる可能性があります。また、相続放棄をしても管理責任はすぐにはなくならず、次の相続人が決まるまで一定の管理が求められます。定期的な点検や必要な管理方法を知っておくことで、空き家がもたらすトラブルの未然防止につながります。早めの対応と計画的な管理が安心につながりますので、参考にしてみてください。


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