2023-06-10
契約不適合とは、売主が買主に引き渡した目的物が、種類や品質、数や量などの点で契約の内容と一致しないことを指します。 契約不適合責任では、目的物に欠陥があるかどうかや、その欠陥が見えないところにあるかどうかは重要ではなく、「契約の内容に沿ったものかどうか」という客観的な基準で判断されます。 例えば、購入した家に住んでみて雨漏りが発生した場合には、雨漏りが「隠れた瑕疵」だったかどうかよりも、「契約の内容と異なっていたかどうか」が問題となります。 さらに、瑕疵担保責任では、不適合を知った日から1年以内に損害賠償や契約解除を請求しなければなりませんでしたが、契約不適合責任では、不適合を知った日から1年以内に売主に通知するだけで権利が消滅しないように改正されました。 これらの点から考えると、瑕疵担保責任に比べて契約不適合責任のほうが、買主の権利がより強化されたと言えるでしょう。
契約不適合責任では、買主は売主に対して5つの権利を行使することができます。
• 追完請求権とは、売主に対して、契約内容に適合するように目的物を修理したり、代わりのものを引き渡したりすることを求める権利です。
• 代金減額請求権とは、売主に対して、契約不適合の部分に相当する金額を売買代金から差し引くか、返還することを求める権利です。
• 契約解除権とは、売主に対して、契約を無効にすることを求める権利です。契約解除権には、催告解除権と無催告解除権があります。催告解除権とは、売主に一定期間内に目的物を適合させるように催促した後に解除する権利です。無催告解除権とは、催促せずに解除する権利です。無催告解除権は、目的物が全く違っていたり、修理が不可能だったりする場合などに限られます。
• 損害賠償請求権とは、売主に対して、契約不適合によって生じた損害の賠償を求める権利です。ただし、売主が契約不適合を知らなかった場合や、買主が不適合を知っていた場合などは、この権利は行使できません。
これらの5つの権利は、買主が自由に選択できるものではありません。契約不適合の程度や状況に応じて、どの権利が行使できるかが決まります。また、これらの権利は排他的ではなく、併用することもできます。例えば、追完請求をした後に契約解除や代金減額をすることも可能です。では、もう少し詳しく解説します!
①追完請求権
追完請求とは、売主に対して、契約の内容に合致する完全な目的物の再引き渡しを請求する権利です。(民法第562条) 不動産においては、購入した後に契約書に記載されていなかった問題が見つかった場合には、修理を要求することができます。追完請求をするためには、売主が故意や過失で不適合を引き起こしたかどうかは問われません。 故意や過失とは、「売主が自分の責任で不適合を招いた事由」、つまり「売主がわざとまたは不注意で不適合を起こした」ことを意味します。 例えば、購入した家に住んでみて雨漏りがあることに気づいたときには、売主に雨漏りの修繕を請求することができます。これは当然のことのように感じますが、瑕疵担保責任では、まず雨漏りがあることを売主が本当に知らなかったことを立証する必要があり、それは容易なことではありませんでした。 しかし契約不適合責任では、「雨漏りがない」と契約書に明記していなければ、雨漏りのない家を購入したものとみなされます。購入後に雨漏りが発生した場合には、たとえ売主が雨漏りの存在を知らなかったとしても、修繕を請求することが可能なのです。
②代金減額請求権
代金減額請求とは、買主が売主に対して追完請求を行ったにも関わらず、十分な対処をされない、または修理が不可能なような問題である場合に減額を請求する権利です。(民法第563条)追完請求と同じく、売主が故意や過失で不適合を引き起こしたかどうかは問われません。 代金減額請求をするには、買主はまず売主に対して追完請求をすることが必要です。雨漏りがあるからと言って、すぐに代金の減額を請求することはできません。 ただし、明らかに修理ができないと判断されるものについては、修繕を要求することなく、代金の減額請求ができるとされています。代金減額請求は、修理が可能なものは催告(相手に一定の期間内に行為をするように通知すること)が必要ですが、修理が不可能なものは催告不要なのです。
③契約解除権(催告解除)
催告解除権とは、契約不適合責任では、売主が追完請求に対応しない場合に、買主が売主に一定期間内に修理をするように催促した後に、契約を無効にする権利、すなわち契約を解除する権利です。(民法第541条) 購入した不動産に契約書に記載されていない問題が存在するのに、売主が修繕を拒否するときには、「修繕をしなければ契約を解除します」と通知することができるのです。契約を解除されると、売主は支払った代金を買主に返却しなければなりません。催告解除は、売主が故意や過失で不適合を起こしたかどうかは関係なく行使できます。ただし、契約の内容と異なる部分が、一般的な見方からみて重要ではないものと認められた場合には、契約解除はできません。
④契約解除権(無催告解除)
無催告解除とは、代金減額請求と同じく、契約解除にも「催告不要の解除」が認められていることを指します。契約不適合で、以下のような場合には、売主に対して一定期間内に修理をするように催促することなく契約を無効にすることができます。(民法第542条)
• 不動産の「全体の引き渡し」が不可能な場合
• 不動産の「全体の引き渡し」を売主が明確に拒否している場合
• 契約の内容と異なる部分を取り除いてしまうと、契約した目的を果たせない場合 無催告解除についても、売主が故意や過失で不適合を引き起こしたかどうかは問われませんが、契約の内容と一致しない部分が軽微なものである場合には、契約解除はできません。
⑤損害賠償請求権
損害賠償権とは、契約不適合責任では、買主が売主に対して損害の賠償を求める権利です。(民法第415条)ただし損害賠償を求めることができるのは、売主が故意や過失で不適合を起こしたときだけです。例えば、自然災害で家が破損し、引き渡しが不可能になった場合には、売主の責めに帰すべき事由ではないので損害賠償は請求できません。 また損害賠償の対象については、「信頼利益」だけでなく、「履行利益」も含まれるようになりました。 信頼利益:契約が成立すると信じて行ったことで発生した損害 履行利益:契約が履行されていれば得られたと思われる利益 信頼利益は、契約をするために支払ったような経費を示し、履行利益は不動産取引をすることで見込んでいた売買差益のような経費が該当します。売主にとっては、損害賠償の範囲が大幅に拡大したと言えるでしょう。 また、瑕疵担保責任では、不適合を知った日から1年以内に損害賠償を「請求」しなければなりませんでしたが、契約不適合責任では「通知」するだけで権利が消滅しないように改正されました。
ここまで、ご覧いただくと、契約不適合責任という概念のもとでは、古家を売却できないのでは?という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
が・・・。安心してください!売主様が契約不適合責任を負わないという特約は有効なのです!!瑕疵担保責任と契約不適合責任は、様々な点で違っていますが、「免責特約が有効である」ということは同じです。これは瑕疵担保責任も契約不適合責任も、民法で「任意規定」とされているからです。任意規定とは、契約者当事者の合意に従って適用しないことにできる規定のことです。 旧民法の時代には、売主と買主が合意したら、瑕疵担保責任の一部や全部を免除することが可能でした。契約不適合責任でも、同じことができます。 瑕疵担保責任では、築年数が古い家を売る場合には、売主の瑕疵担保責任を免除する特約がよく結ばれていましたが、契約不適合責任でも、同様の特約を交わすことができます。但し、契約不適合責任を負わない特約を結ぶ以上、買主様に対するメリット(例えば相場より価格がお値打ちであるなど)がないとなかなか売れない物件となってしまいます。要するにバランスが大切なのです!!
部署:代表取締役
資格:宅地建物取引士・一級建物アドバイザー・不動産キャリアパーソン・空き家マイスター・住宅ローンアドバイザー
この仕事は『ありがとう』が溢れています。お取り扱いする商品が高価であるため、責任が重くプレッシャーが大きい仕事です。ただ、それ以上に、『良い物件を見つけてくれてありがとう!!』『早く売却してくれてありがとう!!』『困ってる不動産の問題が解決できてありがとう!!』など。お客様から本当にたくさんの『ありがとう』を頂きます。地域の不動産業者にしかできない仕事で街づくりに貢献していきたいです。
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